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胚培養士のキャリアインタビュー#01 「目の前の課題を、一つずつ」ママ胚培養士の研究から臨床へ進んだ胚培養士の道

胚培養士のキャリアインタビュー#01 「目の前の課題を、一つずつ」ママ胚培養士の研究から臨床へ進んだ胚培養士の道

vivola編集部
   
 Profile    
 遠山智絵美さん
 さくらウィメンズクリニック・胚培養士

 キャリアの経緯        
  • 麻布大学大学院 獣医学研究科 修士課程修了
  • 加藤レディスクリニック 研究部門【11年間】
  • メーカー(研究・マーケティング・営業・新規事業・経営)【7年間】
  • さくらウィメンズクリニック 胚培養士【現在1年目~】
       
   
      1.研究から始まった生殖医療への道    
    ― 大学院ではどのような研究をされていましたか?
    大学院ではラットを用いて、妊娠維持に関わる子宮の遺伝子発現について、一酸化窒素を中心に解析していました。

    ― なぜ生殖医療という分野を選ばれたのでしょうか?
    学生時代は、子どもを持ちたいという願望もなく、生殖医療は自分にとって未知の分野でした。そのため、患者様の気持ちになれるのかという不安もありました。
    一方で、生物を学ぶ中で、「生殖」や「繁殖」という、生き物の本能を支える医療に興味を持つようになりました。また、他の医療とは異なり、「なかったものを生み出す医療」であることに惹かれたのかもしれません。

    ― クリニックへ入職したきっかけを教えてください。
    漠然と研究職への憧れはありましたが、特定の分野にこだわっていたわけではありませんでした。
    そんな時、大学の教授の紹介で、加藤レディスクリニックで働く卒業生のお話を聞く機会をいただきました。働きがいを感じながら生き生きと働く先輩の姿を見て、「こんなふうに働きたい」と素直に思い、入職を希望しました。

    ― 当時はどのような研究者を目指していましたか?
    「大きな発見をしたい」というよりも、目の前にある課題を見つけ、それを一つずつ解決していきたいという気持ちが強かったです。まずは組織の中にいる人の役に立つこと、小さな世界から貢献していこうと考えていました。  
   
   
      2.患者さんの未来を支える研究開発    
    ― 医療機関ではどのような研究をされていましたか?
    一番大きなテーマは、ヒト卵子・胚凍結保存液を化学合成成分だけで構成することでした。研究を通じて、生殖医療を支える製品開発に携わることができたことは、とても大きな経験になっています。

    ― 学会発表や論文執筆で意識されていたことはありますか?
    実は、手を動かして実験したり、新しいアイデアを試したりすることは大好きなのですが、文章を書くことはあまり得意ではありませんでした。だからこそ、自分一人で抱え込まず、上司や一緒に働く方へ細かく相談することを心掛けていました。
    自分が何を考え、どんな結論に至っているのかを整理して伝えることで、適切なアドバイスをいただくようにしていました。情報を集めることは得意だったので、材料をしっかり揃えたうえで、どうすればより良い形になるかを周囲と一緒に考えていました。
    また、自分自身を客観的に見ることも常に意識していました。  
   
   
      3.メーカーで見えた、生殖医療のもう一つの現場    
    ― なぜ企業へ転職するという選択をされたのでしょうか?
    クリニックでは、とても恵まれた環境で仕事をさせていただいていました。
    ただ、その頃には子どもが生まれ、子育てを中心に生活を考えるようになっていました。また、東日本大震災を経験したことも大きかったと思います。
    もう少し自宅に近いほうが子育てとの両立がしやすいのではないかと考え、企業への転職を決めました。

    ― 企業ではどのようなお仕事をされていましたか?
    研究開発だけでなく、新しい製品の改良提案や仕様の確認、営業やマーケティングなど、幅広い仕事を担当しました。
    医療機関で実際にどのように製品が使われるのかを理解していたため、「もっと使いやすくするにはどうしたらよいか」「治療成績の向上につながるにはどうすればよいか」という視点で提案を行っていました。
    また、子会社の代表取締役を務めた際には、新しい検査サービスの導入など、新規事業にも携わりました。

    ― 医療機関と企業、それぞれを経験して違いを感じたことはありますか?
    実は、あまり大きな違いは感じませんでした。
    不妊治療は、患者様一人ひとりの希望や症状に合わせて治療方針が変わります。医療機関でも企業でも、「患者様やお客様の要望をどうすれば叶えられるか」を考えることは共通していました。
    立場は違っても、目指しているのは「妊娠・出産」という同じゴール。その思いは変わらないと感じています。  
      4.「もっと現場を知りたい」― 胚培養士への挑戦    
    ― 研究・企業というキャリアを歩まれた中で、なぜ臨床の道を選ばれたのでしょうか?
    これまで長く生殖医療に携わってきましたが、実際に日々の臨床業務を担った経験がないことが、ずっと心に引っかかっていました。
    「培養士の皆さんがより働きやすくなる環境をつくりたい」「もっと良い培養成績につながる製品を開発したい」。そう考えたとき、「自分自身が現場を経験することが必要なのではないか」と思うようになりました。
    また、家族との生活を考え、自宅から近い医療機関で働きたいと思っていたタイミングで、現在の培養室長と面談する機会をいただきました。
    私のキャリアを理解し、挑戦を後押ししていただけたことが、現在の職場へ進む大きなきっかけになりました。

    ― 実際に胚培養士として働いてみて、新たに学ぶことは多かったですか?
    胚の操作そのものについては、これまでの経験が役立つ場面もありました。
    一方で、患者様の大切な卵子や胚を日常的に扱うことは初めてだったため、毎日とても緊張しています。
    年齢を重ねていることもあり、周囲からは落ち着いて見えていたかもしれません。でも実際には、ディッシュに手を触れるたびに、「今日も責任ある仕事を任されている」と身が引き締まる思いです。
    だからこそ、「これまでの経験を活かそう」というよりも、「初心を忘れず、一つひとつ丁寧に取り組もう」という気持ちで毎日仕事に向き合っています。  
   
   
      5.子育てと仕事、どちらも大切にしたキャリア    
    ― 妊娠・出産のタイミングで、キャリアについて悩まれたことはありましたか?
    子どもが生まれてからは、「子どもの幸せとは何だろう」と考えるようになり、まずは子育てを大切にしようと思いました。
    幸い、加藤レディスクリニックでは約1年間の産後休暇をいただくことができ、子育てに少し慣れてから仕事へ復帰することができました。
    私は「将来どんなキャリアを積みたいか」を深く考えるタイプではなく、その時々で目の前のことに全力で取り組んできました。
    キャリアそのものに悩むことはない一方、自分だけではなく家族の幸せも大切にしたいという思いから、働く場所や働き方については何度も考えました。

    ― 子育てと仕事を両立するうえで、支えになったことを教えてください。
    一番大きかったのは、夫の存在です。家事や育児を積極的に担ってくれ、「きっと大丈夫」と安心して任せられる信頼関係があったことは、本当に助けられました。
    また、家族には遠慮せず、自分の希望や考えをきちんと伝えるようにしています。
    職場でも、「子どもを優先していいんだよ」と自然に声を掛けてくださる環境があり、とても感謝しています。
    子育てだけでなく、介護や自身の体調など、それぞれ事情を抱えながら働く仲間がいるからこそ、お互いを思いやり、何かあれば支え合う雰囲気があります。
    有給休暇も取得しやすく、安心して働ける職場だと感じています。  
   
   
      6.挑戦を楽しみ続ける、その先に    
    ― 今後のキャリアとして、大切にしたいことを教えてください。
    私は、新しいことを知ったり、考えたりすることがとても好きです。これからも、新しい分野に関わりながら、さまざまなことに挑戦していきたいと思っています。
    その中で、自分の取り組みが誰かの役に立ったり、新しい仕事や価値が生まれたりすると、本当にうれしく、「もっと頑張ろう」という気持ちになります。
    子育てをしていると、「子どもには好きなことに挑戦してほしい」と思う親御さんは多いと思いますが、実は、その気持ちは自分自身にも向けています。
    失敗しても、成功しても、まずはやってみることが大切。
    苦しいことがあっても、「楽しい」と思える仕事に出会えていることは、とても幸せなことだと感じています。
    これからも、多くの人との出会いを大切にしながら、出会った方々に喜んでもらえるようなキャリアを積み重ねていきたいと思っています。  
   
編集部より    
    本インタビューを通して印象的だったのは、華やかな経歴そのものではなく、苦手なことは周囲に相談し、その時々の環境や家族を大切にしながら、自分にできることを一つずつ積み重ねる姿勢でした。
    遠山さんは、ライフステージに合わせて働き方を見直しながらも、新しいことへの挑戦をやめない。その積み重ねが、現在のキャリアにつながっていることが伝わってきます。

本インタビューからの学び
    💡 キャリアの正解は一つではない
    💡 家族や職場と思いを共有し、一人で頑張りすぎない
    💡 挑戦の原動力は「誰かの役に立ちたい」という思い

それぞれのライフステージや価値観に合わせて、自分らしい道を選び続けることが大切なのだと感じさせてくれるインタビューでした。これからキャリアを考える胚培養士の皆さんにとって、一歩踏み出すきっかけになれば幸いです。  


あなたらしいキャリアについて、考えてみませんか?  
     
「転職する」と決めていなくても大丈夫です。
 今の職場を続けるべきか、新しい環境に挑戦してみるべきか。
 キャリアに正解はありません。

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